昭和28年の開催を皮切りに今日までの長きにわたり歴史を刻んで参りました新宿御苑での薪能ですが、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、残念ながら本年度は中止させていただくこととなりました。
新宿御苑で開催された過去の写真から、新宿の秋の風物詩でもある「新宿御苑森の薪能」を少しでも多くの皆様にご覧いただければと思います。
「新宿御苑森の薪能」は、高層ビルの林立する大都会の中に残された、新宿御苑という比類ない環境のもと、よりすぐれた演者・演目による格調高い能舞台が繰り広げられます。
能・狂言は、自然に深く根ざした芸能として完成しました。草木の精霊が主役(シテ)となった能は数多く、日本人が培ってきた、自然を大切にし、自然と一体化し、山川草木にも魂が宿るという価値観が、このような世界に類を見ない優れた芸能を生み出したのでしょう。
豊かな自然環境の新宿御苑での薪能は、まさに能の原点に立ち返る貴重な公演となっております。かがり火に浮かび上がる幽玄の世界を是非お楽しみ下さい。
能は、14世紀半ばに観阿弥・世阿弥によって大成され、時代とともに演じ継がれている現存する最古の舞台芸術です。内容は『平家物語』や『源氏物語』などの古典作品より題材を取っており、悲しみや妄執を抱えて現世に現れた亡霊の能や、五穀豊穣を祈る祝祷の能、鬼や天狗などが主人公となる能などがあります。いずれも登場人物の心情を丁寧に描いた歌舞劇です。
狂言には「本狂言」と「間狂言」とがあります。本狂言は独立したストーリーを持ち、庶民的な日常生活のなかで人々の喜怒哀楽を笑いを交えて描くセリフ劇です。間狂言は能に登場し、所の者となって状況を説明して物語を繋いだり、物語の展開に関わる重要な行動を起こしたりします。
毎回多くの方々にお越しいただいております。開演を心待ちにされている様子。
夕闇からだんだんと暗くなり、かがり火が灯ると会場は一気に幻想的な雰囲気に包みこまれます。
【平成24年度開催の様子】
狂言「二人袴」 野村万作・野村萬斎・野村裕基(和泉流)
能「船弁慶」 観世銕之丞(観世流)
狂言「二人袴」の一場面
能「船弁慶」の一場面
【平成25年度開催の様子】
狂言「六地蔵」 野村万作・野村萬斎(和泉流)
能「井筒」 梅若玄祥(観世流)
狂言「六地蔵」の一場面
能「井筒」の一場面
【平成30年度開催の様子】
狂言「二人袴」 野村萬斎・野村万作・野村裕基(和泉流)
能 「国栖」 観世銕之丞(観世流)
能「国栖」の一場面
会場ができるまでの様子の一部を特別に公開致します。
今後も新宿の持続的な発展のために尽くしてまいりますので、引き続き「新宿御苑森の薪能」をご支援いただきますようお願い申し上げます。
(2020年8月7日)